TOP>『三代実録』に見る貞観津波

『日本三代実録』に見る貞観地震(貞観津波)の記録


2011年3月11日に発生した「東日本大震災」(東北地方太平洋沖地震)は、近代日本の中でも特筆する大災害となりました。被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

今回の地震は日本過去最大のM9.0と言われています。
それに匹敵すると言われる大地震と津波被害が、同じ東北地方で過去に発生したことが、記録で残っています。今回の地震に規模がもっとも類似していると言われるのが、869(貞観11)年に発生した陸奥国大地震です。津波は内陸部の多賀城にまで及び、多数の溺死者を数えました。

『古今和歌集』に次のような歌があります。

「わたつみの 我が身こす浪 立ち返り 海人の住むてふ うらみつるかな 」

これは「恋歌」に分類されていますが、今回の津波の映像を見るに付け、津波被害への挽歌に読まれてなりません。
「浦満つるかな」と「恨みつるかな」を掛けたようには読めないでしょうか…。

実は、貞観地震の869年をはさんで、日本列島には数多くの地震や火山噴火が記録されています。貞観地震(貞観津波)を克明に記録したのは『日本三代実録』です。
今までは「むかしの記録などアテにならない」と馬鹿にされていたものですが、今回の大震災を契機として、一躍注目されるところになりました。

そこで、ここでは皆様に容易に記録を見ていただこうという観点から、地震や噴火の記録をエクセルデータにまとめました。
「天災は忘れたころにやって来る」
このデータを参考に、防災意識を高めてまいりたいと思います。

大きな地震のみを抜粋したもの
http://www.kariginu.jp/sandai2.xls

すべての地震記録をまとめたもの
(地名記載のないものは、基本的に京都の状況を示しています)
http://www.kariginu.jp/sandai.xls

※これらの記録を見ますと、『日本三代実録』の30年間に、ものすごい回数の地震が発生しています。その中でも、貞観11年の陸奥国大地震は特筆する規模であったようです。
 地震の記録のみならず、被災者への救済・税金免除の詔が出されたり、諸神社へ鎮静の祝詞があげられています。こうした記述があるのは陸奥国大地震のみです。

被災者救済の詔(抜粋)
「如聞。陸奧國境。地震尤甚。或海水暴溢而爲患。或城宇頽壓而致殃。百姓何辜。罹斯禍毒。憮然愧懼。責深在予。今遣使者。就布恩煦。使与國司。不論民夷。勤自臨撫。既死者盡加收殯。其存者詳崇振恤。其被害太甚者。勿輸租調。鰥寡孤。窮不能自立者。在所斟量。厚宜支濟。務盡矜恤之旨。俾若朕親覿焉。」

諸社告文(抜粋)
「陸奧國又異常ナル地震之言上タリ。自餘國々モ。又頗有件ト言上タリ。」