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装束の種類(その他の神事服)

齋服(さいふく)

中祭に用いる装束

清浄を求めて衣冠を無文の白絹とした神祇装束で、元禄時代の「神道名目類聚抄」には、入襴(襴に「ありさき」が無く、プリーツになっている)タイプが図入りで紹介されています。現在見られるタイプは明治16年に明治天皇の御裁可によって新しく制定されたものです。
冠は身分に関わらず遠文冠をかぶり、袴が差袴(さしこ・切り袴)であることが特徴です。

浄衣(じょうえ)

小祭に用いる装束

色のある狩衣を小祭装束として用いますが、特に清浄が必要な場合にはすべて白で構成された浄衣を着用します。
袖括りの紐は身分に関わらず白の左右縒を用い、袴は差袴です。

格衣(かくえ)

神事・礼典に用いる装束

最も簡便な服であるため、地鎮祭などでよく用いられます。
直垂の上衣の脇を縫ったもので、羽織のように着て胸紐を結ぶだけです。脇は単純に縫いつぶすほか、千鳥掛けというチェーンステッチにしたり、蛇腹のひだをつけて運動性を良くしています。袖括りの紐は、古式の直垂の例から露先だけ表に出す「籠括(こめくくり)」が本義ですが、一般的には狩衣とまったく同じようにしています。

明衣(みょうえ)

特殊な神事服

「明衣」には天皇が着用するもの、伊勢の神宮で用いるものなどさまざまなタイプがありますが、ここで紹介した明衣は、教派神道で用いるほか、便宜的に祭典で用いられるものです。
 基本的には白い闕腋袍(けってきのほう)での裾が短いもので、衣冠と比べると着装がとても容易です。白小袖、単、指貫の上に袍を着て、後ろに衣紋襞をとって当帯をあて。前に回して諸鉤に結びます。前は狩衣と違って「込み」を入れて懐を作ります。前も二幅と広いので、当て帯で結ぶ辺りで左右から内側に折り込んで着用します。
 縫腋袍よりも足が開きやすいため、馬に乗る神事などで用いることがあるようです。

小忌衣(おみごろも)

「忌」という文字は、神聖なもの・不可侵なものに対する「畏れはばかる」心を示す文字であり、凶事、縁起の悪いことばかりを意味する文字ではありません。古代から日本では最高の吉事である大嘗祭に「小忌衣」を着用してきました。

古代日本の姿を今に

神事に従事するときに羽織る衣が小忌衣です。現代では大嘗祭のみで着用されますが、古くはその他の神事でも着用されました。

 仏教伝来以前の古代日本民族の服装を継承したものと考えられ、袖の端が縫われていないで水引で結んでいるだけとか、文様が青草の汁をすりつけた「青摺」である等の素朴さに、自然を敬う神事観が見て取れます。

 右肩には「赤紐」と呼ばれる赤黒(古くは濃色)の紐を付け、冠には白や青の絹糸でヒカゲカズラをかたどった「日蔭糸」を垂らします。これも古代日本のおしゃれだったのでしょう。

現代では神社の参拝者が「ちゃんちゃんこ」のような白い衣を服の上にはおり、これを「小忌衣」と呼んでいます。
諸司小忌
(しょしのおみ)
出納小忌
(すいのうのおみ)
私小忌
(わたくしのおみ)
神事に参加する摂政・大臣・公卿・殿上人が束帯の袍の上に着用しました。
現代ではこの形式のみ用いられます。
神事で神殿伺候・御服奉仕などをする近臣が着用。
青摺り文様のないものを「如形小忌」と称して神事従事の実務官人が着用しました。
衛府、神祇官、内膳職、主水司などの官人が神事奉仕に着用しました。
私財で誂えるものなのでこの名称があります。

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